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美白を左右するメカニズム タンパク質複合体構造を決定
2008年10月21日
独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)と高エネルギー加速器研究機構(KEK、鈴木厚人機構長)は、肌や髪を黒くするメラニン色素の輸送に必須のタンパク質「Rab27」の2つの複合体の構造を世界で初めて解明したと発表した。同研究成果は、これらのタンパク質間の結合を阻害あるいは安定化するような薬剤の設計に応用することが可能で、今後、メラニン色素輸送を人為的に制御することによって、肌の美白の維持や白髪発生の抑制につながる可能性が期待できるとしている。皮膚や髪の毛に含まれるメラニン色素は、私たちの体を有害な紫外線から守るために重要な役割を果たしているが、その一方で、しみやそばかすの原因ともなっている。メラニン色素は、メラノサイトと呼ばれる細胞で合成され、細胞内顆粒のメラノソームに貯蔵される。細胞の核周辺で成熟したメラノソームは、細胞内にはり巡らされた微小管とアクチン線維に沿って細胞膜まで移動し、隣接するケラチノサイトという皮膚の細胞や毛髪を作る毛母細胞に受け渡され、初めて皮膚や毛髪が黒くなる。
これは、理研生命分子システム基盤研究領域の横山茂之領域長(東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻教授兼務)、システム研究チームの白水美香子上級研究員、新野睦子上級研究員らと国立大学法人東北大学(井上明久総長)生命科学研究科の福田光則教授の研究グループ、KEK物質構造科学研究所構造生物学研究センターの若槻壮市教授(センター長)、マンチェスター大学のレオナルド・シャバス研究員(元総合研究大学院大学高エネルギー加速器科学研究科物質構造科学専攻)らと、国立大学法人群馬大学(鈴木守学長)生体調節研究所の泉哲郎教授の研究グループによる共同研究の成果。
メラニン色素は、「メラノサイト」と呼ばれる皮膚の基底層にある細胞の中で合成され、メラノサイト内の色素顆粒「メラノソーム」に貯蔵される。このメラノソームが、メラノサイト内を移動し、肌や髪の毛を作る細胞に受け渡されることで、肌や髪の毛が黒くなる。メラノサイトにおけるメラノソームの輸送は、Rab27Aと呼ばれる低分子量Gタンパク質が、Gタンパク質に特異的に結合するエフェクターと呼ばれるタンパク質と結合することで、はじめて正常に行われる。Rab27Aは、Slac2-a(別名メラノフィリン:Melanophilin)、Slp2-a(別名エキソフィリン4:Exophilin4)、という2つのエフェクターを連続的に用いて、メラノソームをメラノサイトの核周辺から細胞膜まで輸送する。研究グループは、メラニン色素輸送に中心的な役割を果たしている2つのタンパク質複合体「Rab27A−Slp2-a」および「Rab27B−Slac2-a」の構造を明らかにした。解明した構造情報から、Rab27とSlac2-aおよびSlp2-aとの結合に重要なアミノ酸残基を同定し、Rab27が特定のエフェクターを認識する基盤を解明するとともに、Rab27AとSlac2-aのアミノ酸残基の変異が、肌の白色化の症状を示すグリセリ(Griscelli)症候群という遺伝病を発症する分子メカニズムを明らかにした。
Gタンパク質は、細胞内の生化学反応を切り替えるシグナル伝達やスイッチの機能を持つ、グアニンヌクレオチド結合タンパク質の略称。グアノシン3リン酸をグアノシン2リン酸に切り替える発見をしたアルフレッド・ギルマンとマーティン・ロッベルが、1994年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。分子量が20キロダルトンから30キロダルトンの小さなGタンパク質を、特に低分子量Gタンパク質と呼ぶ。Rabタンパク質は、真核生物に普遍的に存在する低分子量Gタンパク質で、細胞内に存在する核やゴルジ体、リソソームなどの小器官の間で、膜や膜に包まれた袋(小胞)を輸送する過程(膜輸送と総称される)を制御する役割を担う。ヒトには約60種類のRabタンパク質が存在しており、それぞれが固有の膜輸送を制御すると考えられている。
グリセリ(Griscelli)症候群は、肌や毛髪の色素が減少するために白くなる色素異常を特徴とする遺伝性の疾患。Rab27A遺伝子は、グリセリ症候群タイプ2型(GS2)の原因遺伝子であることが2000年に明らかにされ、60種類以上存在するRabタンパク質の中で初めてヒトの遺伝性疾患との関連性が示された。ミオシンVaの変異(グリセリ症候群タイプ1型:GS1)あるいはSlac2-aの変異(タイプ3型:GS3)によっても同様な毛髪の白色化が起こることが知られている。
同研究成果は、文部科学省で推進した「タンパク3000プロジェクト」の一環として行ったもので、米国の科学雑誌『Structure』に掲載されるに先立ち、オンライン版(10月7日付け:日本時間10月8日)に掲載される。(論文)"Structural Basis for the Exclusive Specificity of Slac2-a/Melanophilin for the Rab27 GTPases"Mutsuko Kukimoto-Niino, Ayako Sakamoto, Eiko Kanno, Kyoko Hanawa-Suetsugu, Takaho Terada, Mikako Shirouzu, Mitsunori Fukuda, and Shigeyuki Yokoyama
Structure, Vol 16, 1468-1477, published online 8 October 2008





